「言語世界地図 (新潮新書)」の紹介
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言語世界地図 (新潮新書)


言語世界地図 (新潮新書)
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この商品の感想

記載内容の偏り
言語学への扉としては悪くないと思うが、雑誌の掲載をまとめきれいなく、情報が散乱しているといった感もある。また、最近はありがちだが、アラビア語圏(トルコ語の箇所にもあったが)の文化紹介の中に、唐突に「一部のイスラム教徒による暴力的活動が、国際的に重大な問題を引き起こしているのは事実である P154」などといった記載が見受けられたりする。間違った記載とは言うつもりはないが、「だから将来の相互理解のためにアラビア語を学ぼう」といった結び方もないため、こういった内容を唐突に書くことの意図が不明確だ。他にもこういった前後の文脈とマッチしない意図不明の文化紹介が散在しているのが、本の質を下げている。
いろいろな言語や文化をまとめて「言語学概説」を書く人間にありがちな得意不得意の様相が、この本では文化紹介の記述にはっきりと表われている。
新書だから単語や内容がとても簡単だというわけではない。この本を読める人ならば、この本を選ばずに、大学の教科書的な本を選んだ方がいいかもしれない。この本のよい点は、サイズが小さいことと安いことだ。

言語による世界一周の旅が味わえる
 言語学をより身近なものに感じさせてくれる一連の読み物を著してきた名古屋大学教授の最新作です。地球上に存在する言語数は7000とも言われる中で、そのうちの46言語を選んでそれぞれ4ページ程度に解説を付した一冊です。 

 各言語の文法や語彙の特徴はもちろんのこと、その言語が話される地域や国家の最近の政治経済状況についても一言触れるなど、言語解説本というよりはこの本で世界一周をしたような気分になれる、ガイドブックのようなものです。私は大いに楽しみました。

 いくつか私の誤認を正してもくれました。
 Hungaryという名称を私は東方からヨーロッパへ侵入しきた「フン族」に関係するものだと思い込んでいましたが、本書によればその国名は、5〜6世紀にかけて中央アジアでマジャール人とトルコ系の「オノグル族」が共存していたため、周辺諸国が両者を混同して同一民族とみなし、「オノグル族の国(Ungaria)」と呼んだことに由来するものだということです。

 またフィリピンで話されている公用語の「ピリピノ語」はタガログ語の別称だと勘違いしていましたが、そもそも「ピリピノ語」は1959年に人工的な国語として制定されたものであり、タガログ語にフィリピンで話されている他の言語の要素をいくらか加味したものだというのが実態で、両者は同一のものではないというのです。

 さらには、台湾語をビンナン語と呼ぶことは知っていましたが、そもそもビンナン語が福建省で使用される言語であり、17世紀に同省から台湾島に開拓の名目で人々がつれてこられたことによって言語地図が今日の形になったということを初めて知りました。

 知らなかった、あるいは認識不足だった事実が次から次へと出てくる本書に大変勉強させられました。


やっぱり
筆者は「一定の地位を持ちながら使用されている言語は
すべてとりあげたつもりです」と書いていますが、
ユーラシアに偏り過ぎていて新鮮さは少ないです。
アフリカはスワヒリ語(しかも若干怪しい)と南アフリカだけ、
アメリカはケチュア語とケベック州(と白人英語)だけ、
オセアニアは全く触れられていません(豪州英語が少しだけ)。
ロマンス語プロパーの先生なので仕方ないのですが、
他の本であんまり紹介されていないような言語を
もっと紹介できないのかなと思いました。

もうちょっと踏み込んだ解説がほしかったかと
世界の主な言語について、その概要や使用状況についてエッセイ風に語る、というもの。
言語好きにはたまらない本だし、しかも著者は有名な言語学者の町田先生。

だからこそ、なのだが、もうちょっと掘り下げてほしかったというのが正直な感想。
雑誌連載をまとめたということで、紙幅の問題が大きいのだろうが、各言語の解説はどうも通り一遍のものになってしまっている。
だから、雑誌連載時には気軽な読み物として読めたのだろうが、まとめて読むとどうも物足りなさが残るのだ。

言語の構造についてのちょっとマニアックな解説など、らしさを感じる部分もあるが、このくらいなら、わざわざ町田先生に書いてもらう必要はないのでは、と思ってしまう。

せめて、一冊にまとめるにあたり大幅に加筆してほしかったなぁ。

読ませる言語コラム
1言語たった4ページしかないのに読ませる。しかも46という取り扱い言語数の多さ。「言語世界『地図』」というだけに、各言語ごとに話者分布の地図が付されていて感心。毎回、言語の特徴をだらだらと書くのではなく、言語にかかわる、政治、文化を織り交ぜて書いているのが面白い。大言語の欄では、大言語へと出世した歴史を描いたり、小言語では、その国の説明から言語の特徴を書いている。ベルギーの「言語戦争」の話も出てくるのだけど、セルビア・クロアチア語など、政治が言語を決め、言語は政治を決めるケースも外国では往々にしてあるのだなということだ。

文法の説明はもう少し深くやって欲しかった気もするけど、各言語で特徴的な文法についてはそれなりに説明されている。個人的には、バスク語に出てくる「能格」の機能がきちんとわかって良かった。

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